タイルの名古屋モザイク工業株式会社

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TILE TREND COLUMN #17

受け継がれるガウディの芸術思想と創造の源泉

普遍の美と不変の美しさを追求した芸術家。
巨匠、アントニ・ガウディ / Antoni Gaudí


アントニ・ガウディの傑作住宅、カサ・バトリョ(Casa Batlló)の外観

カサ・バトリョの内部

内部中央の吹き抜けには粘土製のブルータイルが約15,000枚使用されている

アントニ・ガウディは自然からのインスピレーションを得て独自の建築スタイルを築き、曲線や有機的な形状、特異なデザイン要素を巧みに取り入れました。また、自然素材の積極的な使用や自然光の効果的な活用など、建築と環境の融合を追求しており、環境への配慮や持続可能性に着目する先進的な構想を持っていました。

アントニ・ガウディ(1852-1926)は、スペインのバルセロナを拠点に活動した建築家で、その独創的なスタイルと革新的なアプローチは、建築史上において特別な存在感を放ち、彼の作品は芸術の極致とも称されています。構造と美が一体化する彼の建築は、色彩豊かなモザイクや曲線的な形状など、独特な要素を見事に融合させています。これらの特徴は、建築作品が永久に魅力的であり続ける要因であり、時代を超えて人々に感動を与えています。また、際立つ建築細部へのこだわりによる緻密なデザインも、注目すべき点のひとつです。彼は自然界からインスピレーションを得て、植物の曲線や動物の形態を建物に採り入れました。それらのディティールは有機的で生命力に満ち溢れており、革新的な視点によって建築の再構築に成功しています。美しさだけではない実用性と優れた構造設計は、今も建築家たちに多大な影響を与え続けています。


カタロニア・モダニズム建築の最も良く知られた作品例であり、アントニ・ガウディの未完作品「サグラダ・ファミリア聖堂」

サグラダ・ファミリア聖堂は、ガウディの建築思想と造形原理によって驚くべき独創性を宿し、世代を超えた感動に満ち溢れています。進化し続けるこの「未完の聖堂」もいよいよ完成間近といわれています。

代表作で世界遺産でもあるサグラダ・ファミリア聖堂は、1882年から2026年頃までの長い年月をかけて建設が続けられ、ガウディの集大成といわれています。このプロジェクトが一世代では完成しないことは、彼自身が当初から想定していたことでした。その壮大な構想と細部へのこだわり、独特のデザインは、永遠の美しさを感じさせる特別な魅力を放ち、私たちの心を捉え感動を与えます。時間を超越し世代を超えて美を伝える力を持つこの建築は、まさに普遍の美の象徴といえるでしょう。その独特なフォルムが一度見たら忘れられないほど魅力的で、世界中の人々を魅了し続けているこのプロジェクトは、長らく「未完の聖堂」と呼ばれながらも、いよいよ完成の時期が視野に入ってきました。彼は図面だけでなく、膨大な数の模型を作りながら構想を展開したことが知られています。その建築思想は、さまざまな芸術分野に大きな影響を与えてきました。タイルや家具、鉄細工装飾、そして彫刻など、様々な要素を組み合わせる総合芸術志向は、この壮大な聖堂のプロジェクトに息づいており、その魅力は時代を超えて輝き続けます。


神秘の森とも呼ばれる、サグラダ・ファミリア聖堂の内部中央

ステンドグラスから差し込む光がヴォールト天井に反射して美しいグラデーションを作り出している

Hologram, variation hues depending on the direction of light

光の方向によって異なる色彩を帯びるホログラム。
神聖なステンドグラスのような輝きと色彩で、新たな視覚体験をもたらします。

 

ホログラム / Hologram NEW

新商品「ホログラム」は、異なる釉薬に対する光の反応を調査する研究によって生まれました。光の方向で偶発的に変化する美しい色彩の広がり。その不思議な視覚体験は、ステンドグラスに照らし出される神聖な聖堂内部のような光景を思わせます。


ZRO-F1520(奥壁:ブライト仕上げ単色 受注輸入品)

ZRO-F1510(右壁:マット仕上げ単色 受注輸入品)

このタイルは、陶磁器の専門技術者とデザイナーが協力して行った、光と釉薬の相互作用に関する研究の成果です。彼らは貴金属を原料にした釉薬を使用し、光のスペクトルを効果的に描き出す「ホログラフィック」仕上げを開発しました。これまでにないこの特別な技術は、光の変化に対応して異なるスペクトルを示し、幻想的な空間を創り出します。
基本の色として、Milk(ミルク)、Cream(クリーム)、Sky(スカイ)、Rose(ローズ)の4色が用意されており、それぞれに、艶やかな輝きのブライト釉仕上げ、しっとりとした手触りのマット釉薬仕上げ、ホログラフィック仕上げ、3種類の仕上げのタイルが一定の比率でパッケージされた商品です。ホログラフィック仕上げのタイルは、黄×緑、緑×青、黄×オレンジ、黄×ピンク、紫×メタリックブルーなど、多彩なシェードで変化し、幻想的で虹彩のような視覚的効果を生み出します。自然光の変化や進化する多様な人工光に呼応するこのタイルは、独特な要素を融合させて幻想的な空間を構想したガウディの建築思想に通じるものがあります。

CRIPTA DE LA Colònia Güell
Colònia Güell Church : Another Eternal Beauty

もうひとつの不変の美しさをもつ未完の聖堂、コロニア・グエル教会

 

コロニア・グエル教会の内部

コロニア・グエルは、生涯にわたりガウディに作品を依頼し続けたことで知られるスペインの実業家エウゼビ・グエルが、バルセロナ近郊の農場に設けたテキスタイル工場の工業団地でした。彼は経営するこの工場を移設する際に、その近辺に労働者の家を建て企業が管理する独自の工業団地(コロニア)を作る計画を立てました。当時の他の工場と違って水力ではなく石炭をエネルギー源として使い、また経済的に不安定なこの時代に労働者に定期的な給料を保証する先進的な企業で、コロニア・グエルにおいても文化的な施設や教会を建設し、建物には近代主義の建築手法を取り入れました。この施設の建設により、労働者に社会的な改善をもたらし、文化の後援者としての役割を果たしたのでした。
 
1898年、エウゼビ・グエルはコロニア・グエル(Colonia Güell)の教会のプロジェクトをアントニ・ガウディに依頼しました。この依頼は、驚くべきことに予算もデザインも期限さえも自由という、ほとんど制限のないものでした。そこでガウディは自分の工房で、教会の模型を作るなど、いくつかの実験的な研究を行うことができました。そして下層と上層からなる二重構造で、側面や中央に塔がそびえる壮大な計画が立案されました。ところが、1908年に教会の建設が始まったものの、1914年に工事費用が打ち切られてしまい、計画を断念せざるを得なくなり完成には至りませんでした。下層だけが完成した現在の教会は、「クリプタ・グエル」または「グエル・クリプト」(地下礼拝堂)と呼ばれています。元々屋上となる主要な教会の補助礼拝堂で、丘の下にあるべき建物だったことがこの名称の由来となっています。


玄武岩とレンガで構成された外観

ポルチコと呼ばれるエントランスのポーチ

クリプタ(地下礼拝堂)

クリプタはガウディの作品の中でも頂点といえるもので、彼の革新的な建築技術を初めて統一的に取り入れた試みです。外観は玄武岩とレンガで構成され、周辺の豊かな自然と見事に調和しています。丘陵地帯の複雑な地形上に建設しなければならなかったので、本来ならば大規模な森林伐採があってもおかしくありませんでしたが、彼は木々を一切伐採せず、むしろ元からの自然を生かすように、階段の位置などを自ら変更しています。
 
ポルチコ(Portico) / 建築や建築構造の一部として使用される用語
ポルチコは、一連の列柱やアーチで構成、通路や歩廊を支える構造的な要素です。これらの列柱は通常、建物の外部に配置され、アーチや屋根の一部と連携しています。この構造は教会、宮殿、公共建築物、大邸宅、庭園、公共広場などさまざまな建築物に見られます。そのデザインやスタイルは時代や文化によって異なり、建築の美学や機能に特別な魅力と特徴を与えます。


聖堂を取り囲むように設置されたステンドグラスは周辺の松や松ぼっくり、蝶の羽から着想を得て創られたもの

ガウディは、建築材料の再利用にも情熱を注いでいました。

数年間にわたり、持続可能な方法を追求しました。彼は自然から学び、廃材の再利用に焦点を当て、具体的には、工場で廃棄された機織り機の廃品や割れたタイル、焼き過ぎたレンガやその端材、ステンドグラスを覆う金網にも工場から出たスクラップを再利用していました。また外観を周囲の黒松に調和させるために、コークスの燃えカスであるスラグさえも使用したのです。これらの取り組みは、ガウディが持続可能な建築手法を導入し、リサイクルやリユースを実践したことを示しています。素材や材料を再利用して最大限に活かすやり方を実践し、自然への敬意やその環境に調和した建物を目指すガウディの建築へのアプローチは、現在の建築創造にも多くの示唆を与えてくれています。


ステンドグラスを雨風から守るための金網は工場から出た機織り機のスクラップを再利用している

礼拝椅子の材料は、機械の梱包材だった樫の木を再利用している

100年前の建築家ガウディの廃材再利用への情熱は、時を超えて受け継がれています。

鉱山の閉鎖などでタイルの主原料枯渇が進む現在、天然原料に依存しない代替原料の開発が急務となっています。その中で注目されているのが、廃棄物から生成される「溶融スラグ」です。溶融スラグは、廃棄物を溶融炉で高温融解する際に最終的に生成されるガラス状の固形物を指します。現在は主に「道路の基盤材料」や「コンクリートの二次製品」として再利用されることが一般的です。しかし、今後の課題は、この溶融スラグをより効果的にリサイクルし、目に見える形で利用する方法を確立することです。


溶融スラグのイメージ

Focus on the reuse of ruilding materials

建築材料の再利用に注目。
原料の枯渇が進む今、注目される代替原料「溶融スラグ」を使用したリサイクルタイル

  

レヴィッキ / Levikki NEW

原料として溶融スラグ等のリサイクル原料を100%使用した、環境にやさしいタイルです。溶融スラグとは、日本が誇る独自技術の「溶融炉」によって生成されるリサイクル材で、家庭から排出されるゴミを溶融炉において13001700℃の高温で溶かし、減容化・無害化したものです。


LVK-1R

スラグタイルの特徴

  • CO2の削減|焼成温度が低いのでCO2の削減ができる。
  • 地域の色|溶融炉の設備の違いで色が変化するので、地域の特性が出せる。
  • 安心で安全|無害なので安心。強度も通常タイルと同等。
100年前の建築家ガウディが情熱を注いでいた再利用の精神は時代を超えて、今も受け継がれています。
 

最後に、スペイン・バルセロナを訪れる際にはぜひ注目していただきたいタイルがあります。バルセロナの中央に位置するグラシア通りには、ガウディがデザインした、海の要素を取り入れた美しい六角形のタイルが敷き詰められています。ガウディが残した数々の遺産は、現代の建築家やデザイナーに刺激を与え、バルセロナを訪れる人々を魅了し続けることでしょう。


グラシア通りにある、ガウディがデザインしたタイル

 
 

2024.4.1