雑司が谷の豪邸
YERIM YANG + 片山豪 / 文生堂
設計 YERIM YANG + 片山豪 / 文生堂 撮影 楠瀬友将
内/外を繋ぐ土間に、タイルを
ルーフバルコニー付き集合住宅一室の改修計画。エントランスからルーフバルコニーを繋ぐ「土間」が空間の背骨である。下足のまま行き来できる自由度の高い場所であり、生活シーンの起点となる。この「内部」とも「外部」とも受け取れる土間を取り巻くように異種素材を散りばめ、陽や風といった環境の一挙手一投足により、素材それぞれが違う様相となり、空間を彩る。その主演を担っているのが「タイル」だ。質量・強度がもたらす絶対的な変わらなさ・安心感は、「屋外/室内」をつなぐ素材として空間に寄与している。無意識に触れたくなるような、落ち着きを感じる対象でありながらも、凛とした白基調の姿は、空間の演出にも一役買っている。
「モノフロアーⅡ」MOT-227-B1
ルーフバルコニーから連続するタイルが、キッチンへと引き込まれることで、窓の光が床に沿って空間の中に引き込まれ、部屋の中全体を淡い光に満ちたものにしていることを魅力的に感じました。また、タイルの床とフローリングの床とを対比的に組み合わせることで、タイル部分にはキッチンなど水回りの空間が配置され、建築の仕上げが空間の自然な使われ方を誘導するような構成となっているところが、とても良いなと思いました。
守山の家
株式会社岸研一建築設計事務所
設計・監理 岸研一/株式会社岸研一建築設計事務所 実施設計・施工 株式会社湖都コーポレーション
造園 荻野寿也/荻野景観設計株式会社 撮影 小川重雄/小川重雄写真事務所
アウトドアライフを楽しむ家
L字型に配置されたリビングダイニングは、エリアごとに床レベルが異なり、中央にぶら下がる暖炉の壁で緩やかに分節されたワンルーム空間である。玄関からリビングを通して外部まで延びるタイル張りの壁で内外が視覚的に繋がる。ダイニングの床と同レベルのウッドデッキは、アウトドアリビングを囲む様にリビング側へと繋がり、土間の様なリビングとアウトドアリビング側と両方へ繋がるベンチとなる。内外の境界が曖昧になり、外部空間が部屋内へ広がってくる。サッシを開放し、内外がシームレスに繋がった空間で、アウトドアライフを満喫してほしい。
暖炉壁/「オキシドフロアー」ERM-X6130
キッチン壁/「ラボ325」ABI-AC7120
住宅展示場に設えられた、「アウトドアライフを楽しむ」ための空間提案である。この提案自体が、時代のニーズにマッチしている。大きなガラス開口部を介して、縁側のようなベンチが屋外と屋内を一体的に繋げる。外壁の素材はそのまま室内に入り込んでいる。室内側に設けた暖炉は、キャンプファイヤーのようだ。こうしたアウトドアリビングの空間には、屋外を想起させるやや大判で荒々しい仕上げ材が似合う。そこに的確にタイルを用い、壁面や暖炉上部の下がり壁を仕上げている。
兎谷の家
Design8°
Design8° 齋藤秀行 撮影 白木世志一
陰翳礼讃
北側の絞った開口部から入る反射光が淡いグラデーションになって床のタイル面に静かな落ち着きと感性の機微を与えてくれます。室内では当たり前に選択しがちなフローリングでは得られない質感を、タイルはもたらします。
床/「デンバーストン」PST-U3050
壁/「マヨリカモデルナ」ISC-F6790
木造建築内部の柱は2階まで表れ、天井板や壁も外し屋根構造もそのまま意匠として見せている。開放的であり凛とした空気を感じさせる印象的な空間である。ハイサイドライトの光を一旦壁上部に受け、下に間接光として落とす。大きくない窓からの直接光とで空間全体はやや暗めで落ち着いた光で満たし、「陰翳礼讃」薄明かりと影闇への造詣が現されている。流れ柄の床タイルが和でも洋でもない空間の特性を感じさせる。
南郷の家
ハース建築設計事務所
設計 ハース建築設計事務所 撮影 山田雄太
光と質感
本計画は高低差のある敷地に計画された一戸建てのプロジェクトです。この高低差で切り離された敷地を出来る限り一体的にデザインするために、敷地の下にガレージ、敷地の上に住まいを設けそれを1つの大屋根で繋げる計画を行いました。内部空間では光の陰影と素材の質感を意識して空間構成を行いました。壁にはモルタル素地の左官材にタイルを象徴的に使用することで素材そのものの質感を大切にし、天窓からの光で豊かな陰影を演出しました。この「光と質感」を求めた空間は、クライアントの日常生活に豊かな非日常を創り出してくれます。
「クラルテ」CLA-600
室内は主に、木材とモルタルで構成されており、非常に現代的な質感を感じさせる。また、重厚感のあるデザインで、日本的な落ち着きを感じさせるが、一方で、ハイサイドライトからの光がドラマチックに軽やかさを生み、決して重苦しさは感じさせない。木とモルタルのみで構成すると、落ち着きを生み出せる一方で、若干の退屈さを生む可能性もある。そこで、キッチン壁面に上品な色味のカラータイルを張ることで、それを回避し、空間にアクセントをつくっている。
bilateral
ミズタニテツヒロ建築設計
設計 ミズタニテツヒロ建築設計
癒しの時を過ごすための家
夫婦でスローライフを過ごすための住宅。LDKは2つの中庭に挟まれており、かつ2つの回遊動線の間取りであるため機能的であり閉塞感も感じさせない。外部の視線から遮断された守られた中庭は室内空間の延長の感覚が強く、吹き抜けと合わせ高さへの開放感も得られる。利便性の高い市街地にありながら、閑静な癒しの時を過ごせる住まいである。
「ファーレンハイト」FIA-X0650・X0750G
初見では住宅であってもセカンドハウスであっても、どちらも違和感のない完成されたモダンデザイン住宅である。特にLDKはシンプル、開放感、箱庭、閑静というコンセプトをイメージさせる。余計なものが入らないシンプル故の強さを感じさせる。大きな2面の開口はLDKを庭と一体化させ、大きな箱庭の中央に屋根を設けた屋外リビングのように感じさせる。雨天や強風の荒れた天候の時には市街地にいることを忘れさせる感覚に引き込んでくれるとしたら興味深い。内外に同じダークトーンの色調のタイルを敷き込んだことで内と外が一体化し都心の自然環境をダイナミックに見せる効果を期待したい。
重層の甍
株式会社いなほ工務店・有限会社村松篤設計事務所
撮影 畑亮
猫の床
伊丹空港の近隣に建つ瓦屋根の「重層の甍」と命名された住宅。地元淡路瓦の屋根、外壁にも淡路瓦と漆喰を使用した住宅だが性能は高気密高断熱住宅であり、低燃費な床下エアコンを設置した住宅である。床下エアコンシステムの効能により1階廊下、トイレ、洗面、脱衣の床を全てタイルにて施工し、冬暖かく夏涼しい猫の床を演出できた。蓄熱効果が高く、汚れに強く耐水性にも優れているタイルを廊下から続きでユーティリティーに施工できたメリットは非常に大きい。又、廊下正面の壁に青いタイルをアクセントとして施工し、洗面上部からの自然光や夜の電気により表情が変化する美しい壁に仕上がった。
「イリーデ」IR-S-206・IR-S-317
廊下から水回りへと連続する床全体にタイルを敷き詰め、その下に空調空間を作ることで、夏はひんやりと冷たく、冬はふんわりと温かい床を実現しているところが良いと思いました。タイルという素材の持つ、触覚的な魅力が、十分に生かされている作品だと感じました。ぜひこの床を、裸足で歩いてみたいと触発される作品でした。
山の田の家新築工事
岸脇信勝
設計・デザイン 岸脇信勝
木々を泳ぐ
妻と子と三人で暮らす家を建てることになった。木をふんだんに使った切妻屋根の小さな平屋だ。キッチンに使うタイルを選んでいた妻が一目見て惹きつけられたのは魚が描かれたハンドメイドタイルだ。妻が生き生きと僕に言った。『お魚のタイルが並ぶキッチンで料理をしたら楽しそう』。大きな窓から明るい日差しが差し込む家の中央にキッチンを配置し、キッチンの壁から地中海が広がるプランを考えた。タイルはこの小さな平屋の家にとても自然に馴染んだ。魚たちが自由に泳ぐ我が家のキッチンで、日々忙しく家事をする妻も見上げては楽しそうにしている。キッチンはいつも忙しい家族が束の間共に過ごす大切な場所だ。その真ん中にこのタイルはある。
壁/「ハンドメイドデザインタイル」ARC-F1000・J1001・J1019・J1021・J1101・J1102・J1103
床/「ビストロイタリア」MRR-Z1260・Z1280
柱、梁、家具などに、節の多い木材や多様な色味の木材を組み合わせ、”ほっこり”とした非常に温かみある住空間が生まれている。しかし、それだけでは、華やかさや洗練性という要素を獲得しにくい。そこで、大胆にも、キッチン壁面に魚のグラフィックが描かれたイタリア製タイルを張ることで、華やかなアクセントを生み出している。こうした具体性のあるグラフィックは、空間デザインに取り込むことが難しいのだが、設計者は、棚板より上部にだけ絵柄タイルを張るなど、抑制の効いたセンスでバランス良くまとめている。
過去の開催情報
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