HOME | Design award | 第9回 DA2024受賞作品(住宅)
 

WINNER 2024

住宅部門

金 賞

 
田中の家
株式会社 hut 建築事務所

設計 株式会社hut建築事務所

外と内の間
この住宅は、明治期に養蚕業で栄えた地方都市の古い町並みの中に建つ。当時の店舗と母屋、蔵から構成された中庭の在り方を再考し、スキップフロアを用いてレベルに変化を付けることで、中庭と適度な距離感を持ちつつ、住宅密集地の中で採光を確保する配置計画とした。中庭に面して6.8mの連窓を持つ大きな窓辺で生活するフロアをつくり、連窓に沿ってキッチン/ダイニング/リビングへと連続するタイルのベンチを設けた。タイルベンチは野菜やざる置き場、食事の場や植木鉢置き場など様々な行為を許容する大らかな場となった。自然素材から人の手で造られたタイルは、外と内をつなぐ窓辺のベンチに最適な材料と考えた。

窓に沿って長くのびる低い窓台に黒く艶のあるタイルを張ることで、縁側のような、内外をつなぐ豊かな中間領域を生み出している提案です。窓台はベンチでもあり、植物などを置く台でもあり、窓からの光を反射させ室内に引き込む反射板でもあります。シンプルな使い方ながら、場所の特性とあっているとともに、多様な使い方を想像できる多機能さがあり、さらにはそうした魅力が、タイルを使うことによって生まれているところが素晴らしいと感じました。(大西麻貴氏)

銀 賞

 
プラウド一番町一丁目
野村不動産株式会社

撮影 株式会社川澄・小林研二写真事務所

木の温もりを感じる住まいを国産木とタイルで提案
仙台では、屋敷を守るために取り囲むように植えられた樹木を「居久根(いぐね)」と呼び、古くから仙台のまち全体が緑に包まれていた。本物件では、幹や枝などの要素を取り入れ、緑豊かな外観と呼応するように、木の風合いを感じさせるタイルを採用することで、屋敷林のように景観を向上しながら、マンションで構成された画一的な街並みを脱却する、木の温もりを感じさせる住まいを提案した。

壁/「アーバンネイチャー」PAN-AF4440
壁/「ライトクォーツ」CDS-X7370
床/「ソレラス」AB-O3640

仙台にあるラグジュアリーなマンションの共用エリアである。訪れる人を、コンクリート調の大判タイル「アーバンネイチャー」で受け止めて、室内に導く。床には、リアルな凹凸感のある木目調タイル「ソレラス」が張られている。一方、壁面の木材は、タイルのように同一形状のパーツを等間隔に張っている。また、樹木を模した柱の造作には、国産木材が使われている。「木材/タイル」「自然/人工」といった区別を撹乱するようなデザイン手法が、複雑な豊かさを生んでいるように見える。(塩田健一氏)

銅 賞

 
清眺台の家
mononoma

設計 mononoma 撮影 山内紀人

半屋外テラス空間を彩るタイル床
長良川越しに遠方の山々を臨むことの出来る伸びやかな敷地に、高気密高断熱仕様の住宅を計画しました。性能に偏向して内部空間が閉ざされた空間にならないように、外部空間とのつながりを作り出す場所として、住宅の約20%を半屋外テラスに割当てています。ご要望であった半外空間でのテラスでのお食事、北欧の建築家のイメージ、そしてご主人のご趣味の釣竿のメンテナンスや魚の調理にも耐えうる素材ということで、とても喜んでいただけました。タイル独特の手触り感や個々のタイルの色味や質感の違いは、時間帯によって表情の変化がよく見られます。色味を抑えたシンプルな空間構成の中に、楽しげで動きのある雰囲気が演出できたと思います。

室内と室外を等価に扱い丁寧に設計されている様子が非常によく伝わってきた。半屋外を作るために非常に腰壁が効いており、屋外を意識させるタイルと屋内を意識させる細部のディテールが相まって、内外の連続性が作り出されている様子が印象的であった。(谷尻誠氏)

入 賞

 
アウトドアルームのある家
Sデザインファーム株式会社

設計 Sデザインファーム株式会社 撮影 ©︎yasu kojima

アウトドアルームのある家
屋根、ガラス戸の入った欄間、ペンダント照明等によって屋内のように使える「アウトドアルーム」。高気密・高断熱仕様の住宅にありながら、敢えて気温の変化や陽光の移ろいなど自然の変化を感じられる空間として設けた。室内外の両方で使える素材であるタイルは空間の曖昧さを保つ。建具を全て解放すると、LDKからアウトドアルームへと続くタイルにより連続した広がりのある空間が演出される。

テラスの領域を大胆に大きくとることによって、内外の関係性をコントロールされている点が非常に興味深かった。テラスのタレ壁にあたる部分にサッシを入れることで、よりテラスが内部に引き寄せられていた。適切なタイルの用い方であると同時に、次はその一歩先を拝見したいとも思った。(谷尻誠氏)

入 賞

 
金沢文庫のマンションリノベーション
藤原酒谷設計事務所

設計 藤原酒谷設計事務所 撮影 Akira Nakamura

行き止まりのない外部的回遊空間
築約25年になるマンションの一室のリノベーション、設計者らの自邸である。限られた床面積を有効に使うため、廊下と部屋というマンションの典型的な構成を捨て、トイレや収納を含むコアを中心とした回遊性のあるプランを採用した。ぐるりとまわる回遊空間に家族それぞれの暮らしの活動がゆるく連なる場を作った。この境界のない空間の床全面に一枚一枚が多様な表情を見せるタイルを敷き詰めた。石や鉄のようにも見えるこのタイルの肌理が外部的な空間の質を生み出し、たくさんの植物たちと過ごすワイルドで自由な暮らしと、外部との関係性が切り離されがちなマンションにおける内部と外部の連続的な空間体験を実現した。

マンションの一室を自邸としてリノベーションしたプロジェクトである。幅の広い廊下や、回遊性のあるプランニングにより、空間全体がフレキシブルでおおらかな一つの「土間」のように見える。さらに、リビング、ダイニング、キッチンは、屋外に向けて開かれていて、内外をつなぐ気持ち良い中間領域となっている。そうした自由な雰囲気と、床全面に張られた、色むらがあり、屋内外で使えるタイル「ピエトラソーニ」がうまく合致している。(塩田健一氏)

入 賞

 
漆黒の邸
株式会社 I.D.Works

設計・施工 株式会社I.D.Works 川端正人 石井良子

来人をもてなす住まい
事業を経営しておられる施主様の“来客を丁寧にもてなしたい”という思いに沿い、旅宿を訪れた際に感じられる非日常的な高揚感をこの家でも客人に感じて頂けると共に、住まいにとって大切な落ち着きと寛ぎも得られるように計画しました。建物室内の仕上げは屋外でも使える素材を用い、建物内外の境界が曖昧となるようにしています。浴室はハードワークな家主が一日の疲れを癒す場となるよう、大開口を通じて坪庭と繋げ、開放的で季節の移ろいを感じる造りとしています。

床/「バサライク」PAN-U6580U6680G
外壁・内壁/「ディバイスⅡ」KSN227R-110
キッチン・浴室 壁/「エリアボーダー彩」LB-823

住人のための空間であると同時に、施主は、「来客を丁寧にもてなす」ための空間であることを要望したという。テラスから室内へと続く床材と壁材が、内外の境界を消すと同時に、大きな面をつくり出して、ゆったりとした雰囲気を空間に生み出している。壁面には、粗めの表情を持った「ディバイスⅡ」が、床面には石畳のような「バサライク」が採用されている。それらをはじめ、床、壁、天井、家具にさまざまなトーンやテクスチュアの「黒」が用いられており、この空間に滞在するであろうアート、フラワー、そしてゲストたちの華やかな存在感が、黒を背景にして引き立つだろうと感じた。(塩田健一氏)

外壁大判タイル賞(特別賞)

 
H-RESIDENCE
ハウジングオペレーションアーキテクツ

撮影 KATSUHISA KIDA

都市の静寂と洗練
東京都心の隣家が密集した地域での計画である。地域柄、高さ方向や面積が制限されるため敷地形状から法によって建物形状がそのまま反映されやすく、如何にその点において打破できるかを試みた。そこで浮遊した大きなタイル張りの壁を間口いっぱいに広げた。この壁を設ける事で周囲の喧騒から隔絶した静寂を生み、安定的な光で満たされた空間とすると共に、間口の広さを最大限利用したファサードとなった。タイルがもつテクスチュアと艶感が周囲の景色を映し込み、時刻によって表情を変化させる事で風情が生まれ、さほど圧迫感を感じさせない。存在感がありながらも、周囲と調和を図る新たな都心での建ち方をタイルによって実現できたと感じる。

外観の大半をタイルで仕上げたことによって、建築の抽象度が上がっている点を評価させていただいた。デザインを最小限に抑え、材料情報を絞ること、デザインをしていると色々と手を動かしてしまいそうになるが、そこを我慢して設計している様子が非常によく伝わってきた。(谷尻誠氏)

アイデア賞(特別賞)

 
グランタイム都町
JAM.SCENARIO DESIGN 株式会社

デザイン JAM.SCENARIO DESIGN株式会社 松永健吾 施工 照栄建設株式会社

多様な動物と共生する賃貸集合住宅
福岡市で初の試みである、“「大型犬の受入れ」及び「他種の動物(犬猫含む)多頭飼い」ができる賃貸マンション”という施主の希望があった。施主は野犬の保護活動に従事している。動物の感覚から認知する過程を調べ、動物と人が快適な空間を目指し計画した。歩行時にストレス (温度や質感) を抱えないタイルの選定(触覚)、色や素材の変化による色認識(視覚)、爪で引っ掻きタイルの破損による怪我の防止(触覚)、匂いが籠ることがないように換気(嗅覚)など、賃貸なのでメンテナンスが施しやすく汚れが目立たないよう計画した。そして、飼い主と動物ともタイルの素材の違いや張り方のみの空間構成で誘導できるようデザインを行なった。

本プロジェクトは大型犬を含む、さまざまな動物を多頭飼いできるマンションのエントランスにタイルを使用した事例です。タイルという素材の特性である、掃除のしやすさや、傷や匂いのつきづらさ。さらには、触れた時の触り心地や視覚的な印象。人間はもちろん、動物達への影響も配慮しデザインされているところが、今後、他の事例に展開していける可能性を秘めた素晴らしいものであることから、「アイデア賞」を差し上げることとなりました。(大西麻貴氏)

アウトドアリビング賞(特別賞)

 
T様邸
栄和ガーデン株式会社

設計・施工 栄和ガーデン株式会社

outdoor living
関東圏の戸建住宅としては大面積の庭空間を、視覚からも体感からも楽しめる『outdoor living』として演出してみました。個々のパーツのカタチ造りやマテリアルの使い方をダイナミックにすることと、タイルの意匠性を前面に主張させることで、どことなく海外の事例に近い雰囲気を狙ってみました。

関東圏の大きな住宅に設置された屋外スペースである。水盤、植栽、暖炉の炎を感じながら、この場所で仲間と一緒にお酒でも飲んだら、至福の時間が過ごせそうだ。長大なベンチに張り巡らせたタイル「ノール」は、天然石のような荒々しい表情を持ち、屋外リビングらしいワイルドさを空間に与えている。パンデミック以降、空気の流れる開放的な屋外空間に、居住性の高い居場所をつくることが求められている。そうした時代に、タイルの使用方法を含めて参考になるプロジェクトであると考え、「アウトドアリビング賞」に選定した。(塩田健一氏)

過去の開催情報

第8回

Design Award 2023

第7回

Design Award 2022

第6回

Design Award 2021

第5回

Design Award 2020

第4回

Design Award 2019

第3回

Design Award 2018

第2回

Design Award 2017

第1回

Design Award 2015