札幌某ホテル
株式会社 イリア
「テーラーメイド」壁
なんて美しい大浴場の壁面でしょう!湯船に浸かり四季折々の風景画をうっとりと眺める日本の入浴文化に着眼したことだけでなく、何よりも真の意味でモザイクアートを表現しているこの作品を賞賛します。男湯の北海道の白樺の森と女湯の満開の桜の絵画は、コンピュータプログラムによって巧みにピクセルで構成されているとはいえ、完成したモザイク画は素晴らしく洗練された職人技が際立ち驚嘆します。本来あるべきモザイクアートの姿で、このような作品がもっと増えることを期待しています!
銭湯の壁面は富士山という日本人の記憶と、旅先で眺望を楽しむ展望風呂や露天風呂の記憶が融合されている。タイル独特の表現を細かなモザイク寸法と色彩構成によって、平面的な絵画でも素材感を伴った凹凸感が、壁面間接による効果を伴って見ごたえある壁面となっている。その他をグレーの大判タイルで構成することで美しく対比されている。モザイクタイルのポテンシャルを存分に発揮しており、非常にわかりやすく、緻密さや繊細さと大胆さも併せ持っている。
大浴場に壁画を描くという方法は、日本人にとってあまりにも馴染み深い手法であるため、安心感がある。しかし、それをモザイクタイルで描くことで、ホテル内にふさわしいモダンさと上質感を獲得しているように見える。北海道に来たことを体感できそうだ。ホテルの新築およびリニューアルが全国で大変な勢いで続いている中で、そうしたプロジェクトの参考にもなるだろう。
パパブブレ ルミネエスト新宿店
トラフ建築設計事務所
「特注金色タイル」壁
10㎡で10メートルの壁面をどのようにデザインできるか。非常に限られた条件で、デザイナーの力量が問われるところだと思うが、大理石のモザイクタイルによって、アートキャンディの要素を大胆に楽しく、しかも巧みに表現されていて好感がもてる空間になっている。壁面全体がアートワークのようで、人の気持ちを引き付けるエネルギーを発している。この条件だからこそ生まれたデザインと素材の組み合わせはとても印象に残った。
いくつもの観点から、モザイクタイルの特性を引き出した使用法だと感じた。まず、そもそも駅構内には仕上げ材としてタイルが頻用されるので、駅構内に位置するこの店にはタイルは相性が良い。そして、商品が「飴」という非常に小さな商品であり、その点もモザイクタイルのスケール感と相性が良い。また、写真で見ると、タイルで大きな生き物のようなキャラクターが描かれていることが分かる。小さな魚が集まって一つの大きな魚を形づくる「スイミー」という絵本を想起させる。ところが、面白いのは、実際にこの店の前を歩いて通り過ぎると、一つの図像として判別できず、何の模様なのか認識できないという点だ。にもかかわらず、抽象的な柄としても魅力的なのである。
Ode
株式会社 TYRANT
渋谷区広尾に計画されたガストロノミーを提唱するフレンチレストランです。 抒情詩を意味するOde(オード)という店名には、フランス料理に日本の伝統や美意識を紡ぎ合わせ、ストーリー(詩)として表現するというオーナーシェフの想いが込められています。グレーの色調で統一されたタイルやモルタル、それに木などの素材を配した店内には、13席のオープンカウンターに加えオープンキッチンを望むことが出来る6席の半個室と4席の個室を設けています。軒下のような空間によって日本建築特有の美しさを表現すると同時に、異なる要素を紡ぎ合わせ一つのストーリー(詩)として仕立てるというOdeの世界観を体現させました。(写真:株式会社TYRANT 松葉邦彦 様)
このフレンチレストランの雰囲気を表現するとしたら、タイムレスなモノトーンの上品さではないでしょうか。清潔でニュートラルな店内は明るい色調の木の家具と緻密に調和し、顧客が美味しい料理を味わい、楽しむことを手助けするかのようです。気が散ることもなく、セラミックタイルがうまく店舗のデザインに馴染み、レストランの洗練された雰囲気をより引き立てているように思います。
フレンチレストランでありながら日本の伝統や美意識を表している空間は、グレーの濃淡と白木のバランス、シンプルながら巧みな照明計画といった要素によって、抽象表現に詩的な情緒を醸し出している。その中で客席床は部分に過ぎないようにみえるが、コンセプトにあるように「ストーリー(詩)を表現する」といった、少ない要素の繋がりの中でグレータイルの色と素材が生かされている良作である。
ここ数年の時代の気分を色で表せば「グレー」と言えるのではないか。建材で言えば、モルタルが代表的だろう。何かをはっきり決めない色。インダストリアル感、クラフト感、未完成感が漂う色。その意味で、従来、クラシカルにデザインしがちなフレンチレストランを、多様なグレーで包み込み、現代の空気が表現されているように見える。そうした全体イメージの中で、「コットメント」が効果的に床に使われている。こうしたデザインの飲食店は、冷たい印象になりがちだが、この店は、随所に木材も使い、食事の場にふさわしい温かみも確保している。
HIBIYA FOOD HALL
株式会社 リックデザイン
東京ミッドタウン日比谷地下1階フロア、共用通路をはさんだ約860㎡の空間に8つの魅力的なブースで構成されたフードホール業態になります。古き良き文化、建築を残しながら、新しい文化を積極的に取り入れ常に進化する街NEW YORK。クラシックな建築空間をリノベーションしたかのようなホールの中に、モダンでスタイリッシュなブースを配置。上質さと新しさが融合したNYスタイルのコンプレックスデザインになります。(写真:左/株式会社リックデザイン 岡本克宣 様 右/株式会社リックデザイン 皆川陽子様)
「特注大理石ボーダー」床
「アートモザイク施釉10角」カウンター腰壁
暖かみのある茶の色調のモザイクのフロアは、フードホールのレトロなインテリアの雰囲気にぴったりです。一流ホテルのカーペットを彷彿とさせるような、繰り返しの細かなパターンとボーダーラインが、空間に洗練さをもたらすだけでなく、さもなければ広すぎるホールを、居心地のよいくつろげる小さな区画に縮小させ、より親しみを感じながら食事を楽しめる空間を作り出すことに成功しているように思います。
フードホールの共用部に使われたモザイクタイルが印象的である。コンセプトに「上質さと新しさが融合したNYスタイル」とあるように、スタイルを引用している意味では、過去のタイルパターンをリデザインをすることで新しい解釈を与えている。大型フードホールではこのような再解釈によって多くの来客に安心感を与える要素が必要な場合も理解できるし、モザイクタイルのノスタルジック性を表現している。
ここ2年ほど、「フードホール」という業態が日本で大流行している。「HIBIYA FOOD HALL」は、規模といい、中央通路の使い方といい、各店のカウンターの演出といい、日本のフードホールの進化をまた一歩進めたと言ってよい。フードホールの設計で最も重要な点は、店舗同士の、あるいは店舗と共用部の境界線を無くして、いかに全体に一体感を持たせるかだ。そこで、床で連続性を出すことが、デザインのポイントの一つとなる。例えば、渋谷や六本木の店なら、モルタル床でよいかもしれないが、日比谷というオトナの立地で、そうはいかない。そこにタイルを用いて、施設全体に連続感と華やかさを生み出している。名古屋モザイク工業の対象製品を多く使用していることも、評価要因とした。
志摩市立東海小学校
株式会社 久米設計 名古屋支社/〇〇建築ワークショッパー
志摩市/名城大学 人間学部 笠井研究室
5校の小学校(立神・志島・甲賀・国府・安乗小学校)を統廃合し、津波の被害を受けない高台に移転新築した志摩市立東海小学校は、統合前の児童や教職員が設計や施工に参画するなど、たくさんの方々と一緒につくりました。このモザイクタイルアート「志摩の風景」は、平成29年度の5校の5年生が集まり、みんなで協力して、モザイクタイルを一つひとつ並べて製作しました。新しい学校の顔である正門に、左右合わせて幅18mの巨大なパノラマアートとして設置しました。旧5校もプロットし、これまでの歴史や文化、子どもたちの想いを未来へつなげる作品となっています。その他、プール壁面や外部の手洗場のような、児童の学校生活のポイントになる箇所にもモザイクタイルを使っています。
「アートモザイク施釉25角4色ミックス」プール壁
「IPボーダーW」手洗い場(西側・南側)
もう少し挑戦的な風景画にできたのではないかと思うのですが、たくさんの子どもたちが参加して一つの大きなモザイク壁画を作りあげたのはとても素晴らしい試みです。全ての学校でモザイクの壁画をつくるべきではないかと思うほどです。アイロンビーズで絵柄をつくる手法と似ていますし、子どもたちにとってはゲーム感覚でタイルをはめていく作業がきっと面白かったはず!誰もが簡単にできるので完成した作品を誇りに感じていることでしょう。みんなよく頑張った!
10mm角の小さなカラ―モザイクタイルを一つひとつ並べた色面構成によって「志摩の風景」をつくった力作である。このような手間暇をかけた作業は人を感動させる。大きな画面の一部でも丁寧に見よう見まねでも一緒に足並みそろえて出来上がった作品は、おそらく一生記憶されるものになったと思う。彼らにとってモザイクタイルは色鉛筆やクレヨンよりも特別な画材になったであろう。
このプロジェクトは、意匠性というよりも、小学生に参加してもらって皆で壁画をつくるという企画を評価し、投票した。審査の際に、「オトナがビジネスとしてつくった店舗」の写真をひたすら見ていたため、「子供参加型」という特殊さに感情を揺さぶられてしまった。小さい単位が集積して大きな何かを描き出すというモザイクタイル画の特性は、たくさんの小学生が少しずつ協力し合うこの制作スタイルと相性が良いと感じる。絵画だと子供によって「うまい/へた」の差が出そうだが、モザイクタイル画だと、その点のバラツキがなく制作できそうだ。参加した子供は、「自分も小さなパーツとして参加して、一人では成し得ない大きなものがつくれた」という体験を心に刻めるだろう。
GOOD DAYS DINER_atre-kawasaki
ROWEDGE
2018年2月、アトレ川崎が“GOOD LIFE MARKET”というSCコンセプトの元、改装オープンしました。既存の東西自由通路に面して、川崎市、JR東日本による北口改札をつなぐ新しいatre川崎店のエントランス空間が“GOOD DAYS DINER”です。カフェ、ベーカリー、スイーツ、ショップなどが、atreの共通デザインのGAZEBOの内側と外側に新しいFOOD HALLを提案したコンセプトゾーンです。
「オルナメンタ」床
多様なバリエーションとパターンを表現している点で賞賛すべき作品です。顧客を空間へナビゲートし、複数のコーナーやゾーンといった区画を作る上でタイルのレイアウトが良い成果を出しています。また、様々なタイルを並列することは時に難しく、パッチワークのような印象になりがちですが、この商業施設には快活な雰囲気を作り出していて非常に効果的だと思います。
セラミックタイルが大規模商業施設の床素材として、ここ数年主役になっていると感じている。商業的な耐久性、施工性、コスト面での優位性を保っているに他ならないが、いわゆるタイル自体のデザイン的な可能性を追求するデザイナーと製造メーカーとの相乗効果がそのような状況を醸成している。この空間は平面的に見ても様々な要素が混在しているが、大空間の切り変わりを床の表現を中心に印象付けている。
川崎駅に直結した駅ビルの一角である。このエリアは、複数のカフェや食品物販店で構成されている。立地や現代の消費者のマインドを考えると、単なる個店の集合ではなく、一つの街のような環境としてデザインする必要がある。その場合、デザイン的に求められるのは、主に次の三つといえる。街路のような素材感、街のような賑やかさ、個別の店舗の集積を一つのまとまりとして見せる連続感(一体感)。この三つである。それらを、多種多様なタイルを貼り分けることでデザインでうまく実現している。なお、使用した名古屋モザイク工業の対象製品が、種類も多く、面積も大きかったので、そこも採点要因とした。
琉華ホテル新築工事
株式会社 コンセプション
当初のデメリットであった建物の空間の狭さを解消する為、 ミラーとタイルを用いた錯覚効果を狙ったデザインを考案。 タイルは単調にならないよう、ロビー手前と奥でタイルを切り替え素材感を変えている。 手前は最大限に空間を広く見せるようミラーに映り込んだタイルが延長し、空間が続いているような錯覚をおこす。 奥はタイルを三つのサイズに切り分け、パターン張りでリズムを作っている。 タイルにより受付の空間と待合の空間との場分けも担っているが、 大きく空間が変わったという感覚ではなく、無意識的に感じるように配慮している。同時に色味を合わせ、素材感や張り方を変えることで空間の広さのイメージを保てるように意識した。
「コスミオン」ロビー床
「オリジニ」ロビー床
それぞれの区画の機能をタイルのパターンで表現したホテルロビー。幅狭の長いカーペットランナーに似た形状で、タイルのサイズが段階的に小さくなっていき、最終的に美しい緑色のモザイクの淵によってパターンが引き立ちます。まるでタイルの上に敷いたラグのように見えるほど。大きなミラーの効果で空間に二倍の広がりをもたらすのは賢明な試みといえるでしょう。賞金を半減して、倍のタイルを提供してもらってはどうでしょう。名古屋モザイク工業さん!?
ミラーや間接照明を使うことで、ホテルとしては、さほど広くないであろう空間に広がりを生み出しているように見える。ホテルのロビーラウンジということで、温かみや素材感を求められる空間といえる。そこに、不均質で人間味を感じさせる柄のタイルを効果的に用いている。床に、対象製品であるタイルを多数用いて、張り分けているので、製品の使用例として評価したい。
過去の開催情報
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