折衷庵
モナトリエ株式会社
小さく優雅に
受け継いだ生家で末永く暮らしていけるよう基礎構造からリノベーションを施した。小路の奥に位置し狭小であっても贅沢に寛げる住居を熟慮した結果、即物的な広さを確保するのではなく感覚的な広がりを知覚できるデザインとした。単調にならないようチーク・竹・籐・漆喰・真鍮等、様々な素材を用いているが、床や壁に用いたタイルが機縁となり「和」と「洋」、「伝統」と 「革新」、「レトロ」と「モダン」を調和させ、素材だけでなく様式や価値観の折衷を形成している。また、「アルファヒルズ」の流れるような脈模様は、まるで枯山水を模しているかの様に住まい手の美意識を喚起する。
柱/「シェブ」SHB-S2
土間壁/「ラボ325」ABI-Q7130
LDK・土間床/「アルファヒルズ」ALF-X3640
狭小であることを感じさせない、伸びやかで拡がりのある住宅である。大理石、セメント、木質、繊維と多種多様な素材を積極的に取り入れているのだが、そのすべてのトーンがバランスよくまとまりがある。折衷的な異素材セレクトが秀逸であり、繋がるおもしろさが研究されている。特出的なのものとして、艶を放った矢羽紋様のタイル円柱は、マットな落ち着いた空間のアクセントであり特徴的なものにしている。またそのひんやりとしたタイルの質感に手を伸ばして触れたいと感じるだろう。愛着を生む柱が存在している。(五十嵐久枝氏)
熊日RKK住宅展 新産住拓モデルハウス 市中山居
Design 8°
設計 Design8° 齋藤秀行 設計・施工 新産住拓株式会社 撮影 白木世志一
市中山居
生活を取り巻く社会環境が変わり、家で過ごす時間が増えたのと同時に自然の中に身を置くことの大切さを感じている人も多いと思います。家族が一緒に過ごす場所と、それぞれ好きなことをして過ごせる場所、それらの居場所が無理なく当たり前に木々や風や光などの自然と親密につながっている生活環境づくりが「市中山居」の提案です。室内/屋外の壁や床で同じタイルを使うことで内外を同質に扱っています。
壁/「ディバイスⅡ」KSN227R-103
玄関床/「スカンジナビアンストン」CHY-U2130S
エントランス床/「鉄平石」テッペイセキ300
「市中山居」をテーマに木々や光、風を感じられる暮らしのモデルハウスとして計画されたプロジェクト。大地から豊かな木々が芽生えてくるように、土から生まれたタイルはやはり木材と相性が良いのだな、ということを感じさせられました。ダイニングを彩るタイルの壁も、土間に敷かれた鉄平石も、自然と空間に馴染んでいて、居心地の良い一体感のある家となっているところに魅力を感じました。(大西麻貴氏)
宮崎の住宅
株式会社アーキタンツ福岡一級建築士事務所 福田 哲也
株式会社TEDDY&Anchor 野田 敏弘
撮影 有限会社ブリッツスタジオ 石井紀久
自然を切り取る
内部空間の拡張としての中庭空間である。下部は2面完全に切り取られ、プールが跳ね出し、外部の植栽が空間を更に拡張させる。上部は格子に組まれた天井から光が注がれ、幾何学的な陰影が時間とともに変容する。格子サイズは宮崎の強い日射が室内に降り注がないよう計画され、2面の大壁は台風時の強風豪雨に対しても機能する。水と緑と光と風、それと建築。ここでは極力装飾的な仕上げは排除して骨格をシンプルに表現する為、内外建築に同一タイルを敷き込んだ。タイルは装飾・非装飾どちらにも振り幅があり、その上できちんと質感を表現できる素材である。
床/「バイオフィリック」PST-X9730・X9830G
壁/「バイオフィリック」PST-U9720
強いインパクトをもった住宅空間である。繊細なタイル目地と力強い天井開口、それぞれが質の異なる格子のラインを表現し、光と影によって重なり変化する光景が面白く惹き込まれていく。宮崎での強い太陽光と陰影を上手く半屋外空間に取り入れた独自の空間が存在している。半屋外から屋外へと続くプールの揺めく水面と豊かな植栽が建築による幾何学的なラインと相反するものをダイナミックに融合させた壮大な空間。(五十嵐久枝氏)
antique
株式会社CURIOUS design workers
所在地 岐阜県 完成年月 2022年7月
ディレクション・デザイン CURIOUS design workers 石本輝旭
バスルーム=居室(アンティークに寄り添うタイル)
バスルームを入浴する装置ではなく、居場所として計画することでボディケアに時間をかけながら心身ともにくつろぐ計画とした。床、壁には表情豊かなタイルを設置しながら、アクセントとして凹凸のあるタイルを部分的に採用した。アンティークが好きなクライアントが浴室にもアンティーク家具、椅子を設置することで空間全体をアーティスティックに構成している。
壁/「ディストリクト」IOL-F9510・F9511-8M
床/「ピエトラソーニ」PAN-X8110G
単なる身体を清潔に保つ場所としてではなく「居場所」としてバスルームを計画したところを評価したい。水廻りを設置したエリアと、アンティーク家具が置かれるスペースに同じタイルを床壁ともに使用し一体化した「居室空間」に近づけている。庭に面した大きな木製枠の開口部は、そこから燦々と自然光が注がれ、居心地の良さに効果的だ。やわらかな水面と硬質なタイル、自然光を組み合わせたオリジナルな居場所に興味を唆られる。(五十嵐久枝氏)
九十九里の別荘
迫 加奈
設計 株式会社アルテック 阿部勤 施工 石井工業株式会社
開放的につくられ、年月をかけて木々と一体になる浴室
九十九里の海近く、田園風景広がる農村内の別荘。1階はアウトドアリビング、サーフボード等を置くガレージ機能、木々に囲まれた風の通る2階に居室空間が広がる。浴室は建物2階の中心部、夕陽の射し込む北西方向にある。浴槽は背面に傾斜を設けた深い部分と浅い部分があり、浅い “寝湯”部分が建物の壁より外に張り出すことで、外部空間と一体となる開放的なつくりである。湯船に浸かって寛ぐことも、長時間本を読みながら朝風呂もできる。海外のプールタイルを参考に、表情のある淡いブルーグリーンのモザイクタイルを浴槽に採用。緑豊かな景色が写り込む水面が美しい。移植したヤマモミジが芽吹きはじめ、窓外の景色の変化も楽しみだ。
「コスミオン」COS-G11・TW-G11
タイルというのは触覚的な素材だと思います。小さなモザイクタイルがびっしりと敷き詰められた湯船に身を横たえることを想像すると、そのひんやりした肌触りや、凸凹した足触りが感じられるような気がします。お風呂の形を斜めにしたり、深い場所と浅い場所を作ったりと、さまざまな形でタイルの触覚的な魅力を感じながらお風呂を楽しめる工夫があるのが良いなと思いました。外の風景といっぱいにつながる空間体験も魅力的です。(大西麻貴氏)
Rough & Greens
株式会社建築工房DADA
設計 株式会社建築工房DADA
Rough&Greens
広瀬川沿いの崖の上から仙台の街並みと広瀬川を眺望できる計画地に建てられた広々とした邸宅。特注オーダーで製作した玄関ドア、大きく開いた大空間と階段。真っ先に目に入るのは3本の植栽が並ぶインナーテラスと「アルドワーズ」。さらに進み存在感を示すのは表面がガラスで覆われた埋め込み型テレビと「センシマルミ」。トイレにはアクセントで「オキシドフロアー」、洗面には 「キャンプディーゼル」、プライベートな寝室に「コンテクスト」によるアクセント。各種素材感を感じられる空間となっています。
床/「アルドワーズ」RX-AB3860
リビング壁/「センシマルミ」ABI-Q9180
寝室壁/「コンテクスト」AST-U7040
洗面室壁/「キャンプディーゼル」ISC-F1010・F1060・F1061
仙台市の川を見下ろす高台に立つ邸宅。空もよく見える。そうした自然環境を室内に引き込むべく、テラスから室内へと同じ床材「アルドワーズ」を連続して張っている。室内側に配された植栽とも相まって、屋外のようなダイナミックな空間が、室内に生まれている。寝室や洗面所でも、大振りなタイルが使われ、空間に伸びやかなスケール感を与えている。リゾートホテルのような心地良い生活空間の随所に、ときに背景として、ときにアクセントとして、効果的にタイルが使われている。(塩田健一氏)
南城の長屋
株式会社国建
設計 株式会社国建 新田武志
二世帯を包む屋根
沖縄の内陸部に位置する2世帯住宅である。2世帯を包み込むように大屋根がかかり、アマハジ空間という軒下空間を生み出している。この軒下空間は、直射光を遮り、窓を開け心地よい風を取り込むためにも重要な役割を果たす。屋根形状は切妻屋根とし、深い軒の出とすることで、内外のつながりを生み出している。また、コンクリート打ち放しの壁と対比させ、地面から浮いた大きな岩のように壁に負けない重厚感の屋根を演出した。2世帯の住戸は中央の中庭を囲うように配置されており、1本のシンボルツリーが植えられている。この中庭には、洞窟に差し込む光のように屋根がVoidとなって、各住戸に光をいざなう。
「ラバーニャ」CCC-U7680
※屋根部分にタイルをご使用の際は、適切な施工方法をご検討ください。
屋根にタイルを使うことは、私自身大変可能性を感じていることの一つです。瓦よりも棟や端部を抽象的におさめることができ、様々な意匠を選択可能で、他の屋根の素材と全く違う味わいがあります。世の中の屋根に、もっとタイルが使われるようになったら、街の風景も変わるかもしれません。そのように、タイルを屋根に使われた心意気を讃え、今後も屋根のタイルへの可能性を広げていけたらとの思いから、この賞を差し上げることになりました。(大西麻貴氏)
Brillia ist西新
リーメック株式会社
施主 東京建物株式会社 設計 リーメック株式会社 山下豪 髙岡武生 撮影 有限会社ブリッツスタジオ 石井紀久
存在感のある壁
福岡市の都心部に近い、集合住宅のEVホール。金属調タイルをベースに二種類のサイズにカットした石調タイルを組み合わせ、面で見た時に同じパターンとならないように構成した。他にはないデザインで、存在感のある壁となった。
壁/「スカンジナビアンストン」CHY-U2030(カット加工品)
壁/「ジパング」ZP203-1-3M
床/「モンティニャック」CTC-X7110
空間のアクセントとして、元々タイルと金属の組み合わせでデザインしていた壁を、予算の関係からタイルのみで構成することを余儀なくされたとのこと。二種類のタイルを高さを合わせてカットし、ランダムに組み合わせることで魅力的な壁を作り出しているプロジェクトです。様々な制約を、設計の創意工夫で乗り越え魅力的な意匠に昇華されているところが素晴らしいなと感じました。(大西麻貴氏)
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