ARTESSIMO CALDO
AIUEO STUDIO 株式会社
集合住宅のエントランスのデザインと、タイルによるデザインの、双方に新しい視点を与えてくれた作品だと思う。これまで、集合住宅のエントランスと言えば、高く購入してもらったり借りてもらうため、重厚で尊大なデザインが多かった。しかし今回のデザインは、柔らかい色調のタイルを組み合わせ、これまでにない、軽やかで楽しげなエントランスとなっている。デザインそのものについても、あえて同じシリーズの色違いだけを利用し、巧みにシークエンスを生み出しており、今後のタイル利用に刺激を与えそうだ。
1 Livingの家
茂木哲建築設計事務所
菊名の家
Small Design Studio
54.14㎡の小さなマンションに4人暮らしの家。引きで写真を納めることのできない距離感、そのような親密な空間だからこそ、小さいからこそ、現れてくる質感や生活のぬくもり。 どこにでもある家族の風景が、望遠鏡で覗いた様に大きく拡大され、その小さな空間を引き延ばすように配置されたキッチンとその壁に日常の営みが映し出される映画の様に計画した。
コンパクトな面積に4人暮らしの住宅。家具やオブジェをあまり多く置くことができない中で、豊かなライフスタイルをいかに空間で描くか。それをうまくタイルで提案している。使用したタイルは、柔らかいグレーで、複雑で不均質な模様を纏っており、人間味を感じさせる。同時に、やや大きなサイズのタイルを壁一面に貼ることで、非日常性を生んでいる。結果として、キッチンでの何気ない所作の一つひとつが、映画のワンシーンのように映えて、日常に豊かさをもたらしてくれるだろう。
甲賀の家
ハース建築設計事務所
「将来、家で小さな喫茶店をしたい」という夢があるクライアント様のための戸建住宅です。外からの繋がりを大切にするためにポーチと玄関土間(土間リビング・ダイニング)の床を同じタイルで統一し、玄関を入って正面の階段部分には同じ種類のタイルを壁一面に貼ることで、アクセントとしつつ全体の繋がりを創り出しました。外壁の色や階段、照明、家具との相性も考えタイルの種類と色を選びました。ダークな色味ながら窓の光に反射して、柔らかな陰影や素材感を浮かび上がらせ、一日を通して多様な変化をもたらしてくれます。
非常にバランス感のよい、丁寧な作品である。エントランス周りの中で、空間の骨格を作る床と吹き抜けの壁のみをタイルとし、一方で人が触れるカウンターや家具、柔らかく全体を包み込む天井を木とし、対比による調和を作っている。タイルも木も、あまり艶のないものを利用し、素材の良さを活かしている点も好感がもてる。特別に目を引くアイディアがあるわけではないが、こういった質の高いデザインの積み重ねが、本当の意味で日本のデザインリテラシーをあげることにつながるのかもしれない。
BEEVALLEY YOYOGIUEHARA
株式会社 AE 総合計画
4〜5Fがメゾネット形式の住宅。4Fはリビング、ダイニング、書斎等の動的空間、5Fは寝室等の静的空間と位置付け、4Fと5Fをつなぐ階段部分は動から静へのスイッチング空間としている。動的空間である4Fは床・壁・天井をホワイト系の色彩帯で統一し、壁にホワイト系の「スティックストン」と「マーブルラブ」の大判タイルを採用し、家具・建具をポイントカラーとしてブラック系の色でまとめている。スイッチング空間には中間色であるグレー系の「スティックストン」を用いている。5Fの静的空間はウォールナットを中心として、内装カラーと照明の色温度を下階より低く設定しており、日々の生活における人の体内リズムに沿った計画を意図している。
仕上げのなかで、タイルが占める割合が最も多かった作品の一つであるにも関わらず、爽やかな空気感に満ちた作品である。特に、「スティックストン」を2種類使うことによって4Fと5Fのコントラストを引き立てながら家全体の個性も作り出している手腕は素晴らしい。「スティックストン」は、艶のある大判タイルやウォールナットといった様々な素材を一つのデザインにまとめ上げるのにも役立っている。
3 in 1
戸田智建築設計事務所
クライアントは住まいづくりの中でもキッチンにこだわりを持っていた。 オールステンレスのオーダーキッチンはその現れでもあるが、その強い存在感に対して良い緊張感が築けるような壁面もデザイン上のポイントであった。数あるマテリアルの中から質感とメンテナンス性に優れたタイルが選択され、その中でも形状に特徴のある「シェヴロンウォール」に行き着いた。 この異形タイルは凹凸や柄に寄ることなく、その貼り方により画一的ではない個性ある表情を生むことが出来る。マットなステンレスと光沢のある黒いタイルが相俟って、LDKの一室空間の中に独立しているかのようなキッチン空間をつくりだすことに成功した。
小さな表面積のセラミックタイルで上品なアクセントを実現できることを美しく示した作品です。セラミックタイルでキッチンを覆うことは珍しいことではありませんが、シェヴロンパターンが、通常の直交レイアウトと一線を画しています。シェヴロンパターンの一部はキッチンカウンターと平行に、もう一方はダイナミックに右上を指します。キッチンの天井が傾斜しているため、一般的な正方形のパターンと比べ、壁と天井の収まりがうまく機能しています。また、パターンはキッチンコーナー周りに美しく続き、空間全体に素敵なスイングと隆起を与えます。職人の方へ心から称賛を送りたい作品です。
シニアライフを安全に楽に清潔に住める家
株式会社 コンセプション
定年退職を迎え、第二の人生を過ごすご夫婦のための住宅。 元々二世帯住宅でご夫婦の両親が住まれていた部分を、今後介護が必要になった時のことを踏まえてリノベーションした。 使い勝手はシンプルにすると共に、築30年以上経ったデザインを生かしながらも、時を経ても色褪せないデザインを目指した。 全体のデザインの統一性を図りつつ、浴室のモザイクタイルはご夫婦に選んで頂いた色味を取り入れた。 ご自身で選んで頂いたことでより愛着を持って頂けると尚嬉しい。
「コスミオン」浴室 壁
シニアのご夫婦が第二の人生を楽しむ住宅である。「安全に楽に清潔に」をテーマに据えると、一般的には、樹脂系のシート素材や壁紙などが使われそうだが、ここでは、浴室、洗面、キッチンが、様々な色やサイズのタイルで覆い尽くされている。タイルの一部を施主が選んだという。もはや「安全に楽に清潔に」という機能的要件を超えて、設計者と施主の「タイルへの愛情」を感じる。シニアライフにおいて、そしてコロナ禍の「ステイホーム時代」において、愛着の湧く住空間をどうつくるかは重要なテーマである。
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