Instagramフォトコンテスト第9回入賞 建築設計アトリエハイジ 個人邸 「リトロバータ」LEP-AC8220M(1200×600角)
タイルの未来を切り開く、大判化・薄型化と技術の進化
ここ数年、タイルの製造技術は目覚ましい進化を遂げており、特に注目すべきは、ますますの大判化に加え、薄型・軽量化が進んでいる点です。かつては600角や300角のサイズが主流であったのが現在では、特に海外で1200角以上のサイズがスタンダードになりつつあります。このような技術進化が、今後もシームレスで美しい空間を創造する可能性を広げていくでしょう。
「サポナリアロック」CFC-AF9740(1500×750角)
Instagramフォトコンテスト第10回準グランプリ
個人邸 「ノール」OR-AC3440(1200×600角)
大判タイルの普及により、デザインの自由度も格段に向上しました。特に目地の減少で、空間全体に広がりを与え、清潔感も維持しやすくなります。狭い空間で小さなタイルを使うと圧迫感が生まれがちですが、大判タイルを用いることで広々とした印象を与えることができます。弊社主催の施工例写真コンテスト「デザインアワード2024」でも、大判タイルを使用した多くの事例が受賞しています。例えば、1,500×750mmサイズのタイルを住宅の外壁に使用した事例や、超大判2,780×1,200mmサイズのタイルで設えたアウトドアリビング空間のベンチなど、さまざまな空間での利用が評価されました。
デザインアワード2024住宅部門 外壁大判タイル賞 ハウジングオペレーションアーキテクツ 撮影 KATSUHISA KIDA
「マルミマキシマム」 FI-AF360P(1500×750角)
タイルの進化はサイズだけにとどまりません。厚さのスリム化が進み、SDGsの観点から注目されています。原材料の削減や輸送効率の向上を図るため、タイルの厚さを薄くして、軽量化を図っています。6mm厚のタイルに1~2mmの補強材を加えることで、柔軟性を持たせながらも割れにくい仕様を実現したブランドも登場しています。さらに、ミラノサローネ2024やチェルサイエ2024では、世界初の厚さ2mmのタイルが発表され、業界に大きなインパクトを与えました。
アウトドア空間とタイルの新たな可能性
タイルの大判化は、家具への応用も促進しています。特にアウトドアスペースにおいては、大判タイルをアウトドアキッチンやガーデンベンチなどの家具に使用するケースが増えています。アウトドア空間におけるタイルの利点は、その耐久性です。紫外線や雨風にも強く、長期間にわたり美しさを維持できるため、アウトドアリビングのデザインに最適な素材といえます。「デザインアワード2024」でも、アウトドアリビングのベンチ部分を超大判タイルで造作した事例が受賞し、その美しさと機能性が評価されました。
デザインアワード2024住宅部門アウトドアリビング賞 設計・施工 栄和ガーデン株式会社
ベンチ:「ノール」OR-6MM2712-3440 床:「スノーアルプス」DMA-X2230G
また、20mm厚のタイルは、駐車場や庭の置き石風の施工にも対応できる、耐久性の高さから多方面で利用が広がっています。これにより、屋内外の空間をシームレスにつなげるアウトドアリビングという新たなトレンドが生まれ、住空間全体のデザイン性が向上しています。
デザインアワード2024住宅部門入賞 設計 Sデザインファーム株式会社 撮影 ©︎yasu kojima 「モンティニャック」CTC-X7150
2024年11月には、革新的な20mm厚の新商品を3点発表しました。
アーバングレイン / Urban Grain NEW
「アーバングレイン」は、石英岩をモチーフに、都市のダイナミックなエネルギーと自然の静けさを融合させた20mm厚シリーズです。クールなグレー系の色調は都会的でモダンな雰囲気を、大胆な石模様は自然の趣を表現し、居住空間や商業空間にオリジナリティと快適性をもたらします。
海外施工例 UBG-X002
ブリージト / Breezito NEW
「ブリージト」は、20mm厚に近い強度を持ちながらコストを抑えた18mm厚のタイルです。グラニットのこたたき面を再現し、モノトーンからナチュラルなカラーまで豊富なカラーバリエーションと滑りにくいテクスチュアで安全性を確保しています。
海外施工例 CHY-X2420G
カラー2410G(カット加工品)
フェズリード / Fezrid NEW
「フェズリード」は、トラバーチンのクロスカット模様を再現したタイルで、柔らかな石灰岩の質感と明るい色調が、自然との調和を感じさせる空間を演出します。コスト面でも取り入れやすく、洗練されたデザインを手軽に実現できる点が魅力です。
海外施工例 DMA-X2450G
再注目されるトラバーチンの魅力
ここ1〜2年でトラバーチンは、そのクラシックでエレガントな風合いが再評価され、注目を集め続けています。これまでもトラバーチンを模倣したタイルはありましたが、タイル製造の技術進歩により、質感や模様がより天然石に近いものになってきています。色調は、これまでのベージュ系に加えて、レッドやブラウン、グレー系が増加したのが2024年の特徴です。かつては難しかった赤色の再現が、インクジェット技術の進化によって実現し、レッドトラバーチンのような多彩な色彩と複雑な模様の再現を可能にしました。レッドトラバーチンは、トレンドであるテラコッタの温かみを持つカラートーンとも調和し、自然素材との相性が良い点が魅力です。
レッドトラバーチン
また、クロスカット模様を再現したトラバーチンが市場に多く出回るようになった点も2024年の特徴です。同じ石種でも切断方向によって異なる表情を見せる、ヴェインカット模様とクロスカット模様。この2つは全く異なる印象を創り出すことができます。ヴェインカット模様は縦に力強く流れるラインが特徴で、ダイナミックで洗練された空間を演出します。一方、クロスカット模様はより柔らかく繊細な模様が広がり、自然な温かみと落ち着きをもたらします。例えば、トラバーチンのヴェインカット模様を再現したシリーズ「アストラヴェイン」とクロスカット模様を再現したシリーズ「フェズリード」を同じ空間で組み合わせて、壁と床で壮大な立体感を持たせるのもおすすめの表現方法です。
海外施工例 「アストラヴェイン」SPG-AC2370
海外施工例 「フェズリード」DMA-AC2420
技術の進化とともに大判タイルの普及や厚さのスリム化、家具への応用など、タイルの可能性はますます広がり続けています。これからもタイルがどのような新しい空間デザインを創出していくのか、その動向から目が離せません。
次世代のタイルが生み出す空間の美しさと機能性を、ぜひ来年もお楽しみに!