幾何学デザインや抽象絵画は、
キュビズムからポジティブなエネルギーを受けとっています
キュビズムは20世紀初頭にフランスで発生した芸術運動で、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックによって提唱され、近代絵画における重要な潮流の一つとされています。物体や人物を幾何学的な形状に分解し、異なる視点や角度から同時に描写することで、空間の深さや物体の立体感を多角的に捉える試みを行いました。キュビズムの創始者たちはポスト印象派の画家ポール・セザンヌの作品を研究し、彼の「立体感や形態の再構築」という革新的なアプローチからインスピレーションを受け、これを基にして新しい芸術表現を推し進めやがてキュビズムを確立しました。
この芸術運動の誕生には、いくつかの文化的要因が考えられます。写実主義や印象派などの従来の芸術スタイルへの反発があり、またアフリカやオセアニアの伝統的な非西洋美術からのインスピレーションが、彼らに新たな表現形式を促しました。
キュビズムの活動は、視覚的な革新と幾何学的な形態の探求を通じて、20世紀の芸術界に大きな衝撃を与え、近代美術の新たな方向性を示しました。多くの抽象絵画や幾何学デザインには、キュビズムの要素やアプローチが見られることがあります。キュビズムは新しい表現形式と視覚的な刺激を喚起し、芸術のみならずデザインの分野にもポジティブなエネルギーをもたらしました。絵画やデザインが人々にポジティブな感情を与え、魅了するのは、その視覚表現だけでなく、内在する創造性や革新性が要因と考えられます。
多くの現代建築や芸術作品には今もキュビズムの影響が見られ、この芸術運動の遺産が現代の創造性や表現形式に継承されていることが認識されています。これは、視覚表現のみならず、幾何学的形態の探求という心理的活動が、持続的な影響力を持ち続けているためと考えられます。キュビズムの影響が潜む幾何学的な構成や楽観的なデザインスタイルは、空間に現代的で前向きな要素をもたらします。見る者に新しい視点と感性を提供し、さまざまな空間を魅力的なものにしています。
今回ご紹介する、9月発売の新商品「コンクリートアート」と「コンセクティーヴォ」のデザインの中にも、キュビズム的スタイルが取り入れられています。色と形を一度分解し再構築する創造的なアートワークが、ポジティブなエネルギーを拡散し、革新的な空間を演出します。
コンクリートアート / Concrete art NEW
このコレクションは、従来の模倣的なデザインからの解放をテーマにしており、色彩の対比を活かした自由な表現を試みることができます。セメント素材をモチーフにし、どんな空間にも調和する中立的な色調を取り入れています。
海外施工例
壁:カラー1010・1050(600角9厚 受注輸入形状)
床:カラー1020(1200角9厚 受注輸入形状)
海外施工例
壁:CDS-AC1571・AC1572・AC1573・ AC1574・AC1575・AC1576
壁・床:カラー1010(2800×1200角6厚・1200角9厚 受注輸入形状)
タイルは昔から建築に欠かせない要素であるため、歴史的な建築物がタイルメーカーのインスピレーションとなっているのは当然のことですが、今年のトレンドとして、それが顕著に表れています。コンクリートアートのカラーパレットと幾何学模様は、メキシコの前衛的な建築家リカルド・レゴレッタやルイス・バラガンの作品にインスピレーションを受けており、明るくパワフルで、漆喰のような陰影のある表情を際立たせています。色彩の遊び心を取り入れることで、控えめでありながらも深みのある魅力的な空間をデザインすることができ、建築に新たな視覚的豊かさを加えることができます。
コンクリートアートの工場とショールーム
コンクリートアートの製造工場は、イタリアのボローニャとファエンツァの間にある、何世紀もの歴史を持つエミリア通り沿いにあります。
原料土の保管場所(自社で原料を調合している)
プレスされる直前の原料土
7,500トン以上のローラープレス機でプレスされた後(ローラープレス機はより大きいサイズを製造することができる)
焼成(最高温度1,200度)
巨大な梱包設備
ショールームの展示風景
原料土の保管タンク、配合機、乾燥機、7,500トンを超えるプレス機、プリンター、カッター、そして梱包設備――いずれも大規模な装置が縦横に広がっており、圧巻の風景です。幅約4メートルの通路を、ロボットが悠々と通り抜けていく様子も見られます。1970年代にはすでに生産効率を大幅に向上させる機械が開発されていましたが、今日ではその機械がロボットへと進化しています。タイル産業に限らず、イタリアはマンパワー以外の動力導入に積極的で、スペインでも同様の傾向が見られます。メーカーを訪れると、生産ラインにほとんど人がいないことに驚かされるでしょう。
タイルのハンドメイドデザインや目視が必要な最終の品質検査、色を並べるシート張り作業を除けば、成形から焼成、運搬、チェックに至るまで、ほぼ全てが機械やロボットによって行われています。さらに、梱包や在庫管理、倉庫内でのピッキング・出荷に至るまで、そのほとんどがロボットとコンピューターシステムで管理されています。この結果、1日の生産規模は、日本では到底及ばないほどのスケールに達しています。機械化により、人が働くべき分野とそうでない分野の棲み分けが進み、クリエイティブな領域に一層専念できるようになりました。
コンクリートアートのタイル裏面に刻まれた「Made in Italy」
工場内の機械液晶にもイタリアの国旗が映し出されていた
限られた人口と土地から生み出される、世界最高峰のプロダクトには「Made in Italy」の刻印が押され、それが彼らの誇りとなっています。「この刻印は、製造プロセスの中でも最も大切な作業の一つ」と彼らは言います。イタリアの人々は、人間らしく創造的であること、美しいものを愛で、家族や恋人との暮らしを豊かにすることを重視しており、それが今日の産業の発展と誇りをかたち作っているのでしょう。
コンセクティーヴォ / Consecutivo NEW
ABI-AC8713
最大の特長は、最新の3D Tech技術が施されている点です。高精細グラフィックと3D表現がぴったりと重なり合い、色や模様、テクスチュアを複雑に組み合わせた繊細な表現を実現しました。3D Tech技術によって、単なる装飾にとどまらず、触れることで感じる質感と視覚的な深みを兼ね備えています。タイル一枚一枚がアート作品のような存在感を放ち、現代の建築デザインに新たな可能性を切り開くマテリアルといえます。
製造メーカー(イタリア)のショールーム展示
3D Tech技術が施されたテクスチュア
自然界の幾何学的な美しさを追求したデザインと、異なる時代の美的要素を融合させたアートワーク。
これらのタイルは、未来の建築に新たな調和とポジティブな創造性をもたらすでしょう。