近年の技術革新により、タイルの存在意義は大きく変貌を遂げています。かつては“仕上げ材”として空間の背景を支えていたタイルは、いまや空間そのものの印象を左右する、“感性に訴えるマテリアル”へと進化を遂げています。特に注目すべきは、デジタルプリントの技術革新です。天然石や木材、ファブリック素材、金属など、異素材の質感をリアルかつ繊細に再現する技術が飛躍的に向上し、これまで難しかった本物のマテリアル特有の奥行き感や表情までも、タイルで再現可能することが可能になりました。さらに、タイル表面の意匠も多様化しています。ハンドメイドのような質感や立体的な凹凸の表現など、視覚的な美しさだけでなく“触覚的な存在感”を提供するタイルも増え、空間そのものをかたちづくる存在へと進化しつつあります。こうした潮流は、イタリア・ボローニャで毎年9月に開催される「Cersaie(チェルサイエ)」やスペイン・バレンシアの「Cevisama(セビサマ)」といった国際見本市で顕著に表れており、最先端技術を駆使したタイルが世界中の建築家やデザイナーたちの注目をあびています。
新たなタイルデザインの潮流
マルミマキシマム - セレナイト / SELENITE NEW
こうした潮流の象徴ともいえる存在が、マルミマキシマムの新シリーズ「セレナイト(Selenite)」です。近年、特に住宅において“心地よさ”や“内面的な豊かさ”が重視されるようになりました。セレナイトは、こうした現代の感性に寄り添い、空間にやさしく溶け込むコレクションです。

海外施工例 FI-AF8020P
古代からのインスピレーション「ラピス・スペクラリス」
このコレクションの発想の出発点となったのは、紀元前1世紀頃の古代ローマで“光を通す石”として用いられていた「Lapis specularis(ラピス・スぺクラリス)」と呼ばれる透明な石膏の一種です。ガラス製の窓がまだ普及していなかった当時、人々はこの透明な石膏を薄くスライスして住宅の窓として採光に用いていました。ラピス・スぺクラリスは自然光をやさしく透過し、室内にやわらかな光をもたらしました。ときに淡く金色がかったその輝きは、まるで時間がゆるやかに流れているような静けさを空間にもたらしました。ラピス・スペクラリスは、ただの“窓”ではなく、“光を調えるマテリアル”としての役割を担っていました。そんな歴史的素材をテクノロジーによって現代のマテリアルとして蘇らせたのが、セレナイトです。過去の記憶を未来へ紡ぐ素材として、現代の空間創造に新たな可能性をもたらすでしょう。

Lapis Specularis(ラピス・スペクラリス)
美しさとテクノロジーの結晶「ジュエル仕上げ」
セレナイトの最大の特徴は、最新技術「ジュエル仕上げ」です。「ジュエル仕上げ」は、虹色の鉱物とガラス質の素材を融合させ、まるでタイルの内部まで結晶で形成されているかのような幻想的な輝きを表現しています。淡く発光するような意匠は、月光に照らされた静謐な海を連想させ、空間に“魔法”のような効果を与えます。

この幻想的で革新的なタイルは、住宅からホテル、商業空間まで幅広いシーンでその力を発揮します。例えばホテルや店舗では、間接照明との組み合わせによってラグジュアリーな雰囲気を演出し、住宅空間では、リビングや玄関ホールのアクセントに使用することで日常空間に上質な特別感をもたらします。

海外施工例 / 店舗 壁:FI-6MM3015-8010P 床:FI-AF8010P

海外施工例 / ホテル カラー8010(1500角 受注輸入形状)

海外施工例 / 寝室 FI-AF8020P
カラーバリエーションはホワイト、グレージュ、ブラックの3色で、空間にやわらかな陰影をもたらします。どのカラーも落ち着いた色調でありながら、光を受けることで豊かな表情を見せるため、空間のスタイルを選ばず、モダンにもクラシックにも調和します。
WHITE / カラー8010P

カラー8010P

海外施工例 カラー8010P(1500角 受注輸入形状)
GREIGE / カラー8020P

海外施工例 FI-AF8020P

カラー8020P

海外施工例 FI-6MM3015-8020P
BLACK / カラー8030P

カラー8030P

海外施工例 カラー8030P(1500角 受注輸入形状)
マーブルラブ / MARBLE LAB NEW COLOR
高い意匠性と機能性を兼ね備えた、大理石模様のタイルの中でも最も洗練されたシリーズ「マーブルラブ」に、新たなカラーバリエーションが加わりました。超大判6mm厚の「マルミマキシマム」と同色の組み合わせも可能で、空間に統一感をもたらします。新色の特殊面状(7120H・9180H)には、「Multi-Layer Technology(マルチレイヤーテクノロジー)」と「Dry Status Technology(ドライステイタステクノロジー)」という2つの革新的技術が採用されており、奥行きのある3Dテクスチュア効果とともに、天然石がもつ複雑な表情を精巧に再現しています。芸術的ともいえる美しいディテールと現代的かつ大胆なデザインは、空間に新たな印象を与えます。
Multi-Layer Technology(マルチレイヤー テクノロジー/MLT)
硬度・弾力・密度・融点が異なる釉薬を混合して焼成することで、タイル層の表面から深層部まで表情の違うテクスチュアを融合させる技術
Dry Status Technology(ドライ ステイタス テクノロジー/DST)
着色顔料を薄いチップ状にした乾式釉薬を積み重ねる手法で、革新的な3Dレイヤリング効果を強調するこのシリーズだけの完全オリジナル技術

海外施工例 床:カラー9810H(1200角 受注輸入形状) 壁:「マルミマキシマム」FI-6MM3015-9810H-A・B

海外施工例 FIA-AC357

海外施工例 FIA-AC407
カラー7127・7120Hは、ドリップ技法で知られる画家、ジャクソン・ポロック(1912-1956)の作品を思わせるような、色彩のスプラッシュが印象的です。

海外施工例 カラー7120H(1200角 受注輸入形状)

ジャクソン・ポロックの絵画(Bumble Dee - stock.adobe.com)

7120H(特殊面状)
7127(平)

9810H(特殊面状)
9817(平)

357(平)
350P(磨き)

407(平)
400P(磨き)

4617(平)
4611P(磨き)
マルミマキシマムの新シリーズ「セレナイト」や進化を遂げた「マーブルラブ」は、タイルの最前線を象徴する存在です。感性に響くマテリアルが空間に詩情と個性をもたらし、見る人・触れる人の心に深く残る——そんなタイルの“これから”が、いま始まっています。